「堺市版 医療と介護の多職種連携マニュアル」の発行に寄せて
一般社団法人 堺市医師会
会長 西川 正治

 超高齢社会をむかえた堺市において、高齢者が医療や介護を必要とする状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしができるように、医療・介護に携わる多職種は、綿密な連携体制をとり、適切かつ切れ目のない医療・介護サービスを提供することが求められています。

 本会では、医療と介護の連携推進のために、平成21年10月に「堺市版医療と介護の連携マニュアル」を作成し、平成26年6月には「<堺市版>医療・介護の多職種連携マニュアル」に改訂してきました。その後、診療報酬・介護報酬の改定があり、また医療・介護連携での新しい取り組みも出てきました。堺市では、平成29年7月に医療と介護をつなげる堺地域医療連携支援センターが堺市医師会に設置され、平成30年10月1日には『堺市超高齢社会に対応するための地域包括ケアシステムの推進に関する条例』が制定されました。これらの変化に対応して、今回マニュアルの見直しを行うこととし、医師・歯科医師・薬剤師・訪問看護師・介護支援専門員・入退院に携わる病院関係者の方々にお集まりいただき、さまざまな立場から出された意見を集約して、情報の円滑なやりとりと共有のための一つのツールとして、改訂版『堺市版 医療・介護の多職種連携マニュアル』を作成しました。

 マニュアル内には、医療・介護サービスを提供する関係機関が情報共有のために工夫された連携シートや、それぞれの立場からのQ&Aを掲載しております。ぜひご活用いただき、 堺市における医療と介護の多職種連携が更に進むことを期待しています。 作成にあたりご協力いただきました、「堺市における医療と介護の連携をすすめる関係者会議(いいともネットさかい)」にご参画いただいている皆様に感謝申し上げます。

高齢者ののちときがいを支えるためにともに力になろう

 全国的に高齢化が進行する中、高齢者が住み慣れた地域で、安心して自分らしく生活していくことのできる仕組みづくり −地域包括ケアシステムの構築− は、いまや我が国における最重要課題のひとつです。地域包括ケアシステムの根幹は、高齢者に対する医療・介護サービスの適切かつ円滑な提供体制であり、その構築のためには、地域における医療と介護の関係者が緊密に連携することが何よりも大切です。

 堺市域においては、平成21年10月、堺市医師会の主導する「堺市における医療と介護の連携を進める関係者会議(いいともネットさかい)」が『堺市版「医療と介護の連携マニュアル」』を作成し、「医師と介護支援専門員との連絡票」を定めることなどによって、主として医師と介護支援専門員との情報共有の円滑化、連携の強化に取り組んできました。

 平成25年に堺市医師会が実施した「医療と介護の連携についてのアンケート」の調査結果では、医師と介護支援専門員の間のみならず、歯科医師、薬剤師、訪問看護ステーションの看護師など、多職種が円滑に情報共有することにより連携を強化する必要があることが明らかとなりました。これらをうけて、平成26年6月には、本マニュアルの全面改訂を行い、在宅高齢者の支援に関わる各職種の間での情報共有のための共通シートを新たに定めたほか、連携に関する様々なQ&Aや相談機関を掲載しました。

 ところが、前回の改訂から5年が経過し、連携の進展は見られたものの、この間診療報酬の改定、堺市や各団体の組織改正や名称変更等があったことに加え、平成28年の「堺市在宅医療・介護連携に関する調査報告書」を基に連携をさらに進めていくため、この度、本マニュアルを改訂することとなりました。今回の改訂では、平成29年に開設した堺地域医療連携支援センターを新たに掲載したほか、各シートの修正と項目の追加、Q&Aの刷新も行いました。

 なお、今回の改訂に当たっては、「いいともネットさかい」の愛称の由来である「高齢者ののちときがいを支えるためにともに力になろう」の理念を再確認し、これを指針として作業を行いました。「いいともネットさかい」の愛称に結晶したこの想いは、多職種が連携する上で私たち一人ひとりが共有する共通の価値観であると考えます。

各職種の方々が、本マニュアルを大いに活用され、相互の連携をとっていく上での一助となれば幸いです。

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